九州の北部、玄界灘に浮かぶ壱岐島。弥生時代の原風景を彷彿とさせ、日本遺産の構成文化財でもある国特別史跡「原の辻遺跡」を望む丘の上に長崎県埋蔵文化財センターはあります。
平成22年3月14日、併設する壱岐市立一支国(いきこく)博物館のオープンと同時に開所した本センターは、長崎県の埋蔵文化財保護行政の中核機関として、県内埋蔵文化財の発掘・調査研究、出土品の保存・活用、普及啓発などを行っています。
中でも、遺跡の全容解明を目的に継続して実施している原の辻遺跡の発掘調査や東アジアとの交流に視点をおいた考古学研究、長崎県立壱岐高等学校の東アジア歴史・中国語コースへの授業支援をはじめとする教育支援などは、全国でも珍しく、本センターならではの特色ある取組みです。
調査研究の成果は、一支国博物館での展示等を通して多くの皆様にご覧いただけるようにしています。特に収蔵品や内部の様子を間近に見ることができる全面ガラス張りのオープン収蔵庫とそこでの企画展示は迫力満点です。
本センターは今年3月、15周年を迎えました。令和3年度から実施しています水中文化遺産保存活用推進事業では、県内にある水中遺跡の保存と活用を目的として、新たな水中遺跡の発見に向けて分布調査や潜水調査を行っています。また教育支援事業として、新たに令和7年度から「身近な埋蔵文化財の魅力」再発見事業を立ち上げ、県内の高校が所蔵する埋蔵文化財を生徒の学習活動の中で教材として整理し、その成果を公開する学校資料展を対馬市で行う予定です。
今年度は原の辻遺跡特別史跡指定25周年を迎えます。長崎県内では「ながさきピース文化祭2025」が開催され、県内各地で多くの文化的な行事が開催されます。当センターがある一支国博物館においても様々なイベントが開催されますので、この機会に是非お越しください。
今後も、長崎県内で行われる埋蔵文化財発掘調査の円滑な推進や調査成果の公開、韓国釜山博物館との友好機関協定締結を基軸とした東アジア考古学における国際交流、壱岐高校コース支援を中心とした学校教育支援や人材育成など、壱岐市立一支国博物館と連携しながら地域振興に寄与できるよう取り組んでまいります。ご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
令和7年4月 長崎県埋蔵文化財センター 所長 寺田正剛